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〜ASTA出張授業@愛知教育大学 会場レポート〜

2017/12/29

LGBT当事者の「ナマの声」からわかること

Kengo Higashi - Media for Society 副編集長 Profile
コピーライター、ライター@名古屋

愛知教育大学では12月4日から10日にかけて、セクシュアルマイノリティ(性的少数者)の啓発団体「BALLoon」による「AIKYO ALLY WEEK」が開催された。これは「ALLY(アライ:LGBTの味方になれる人)」を増やすことを目的としたイベントで、最終日の10日にはNPO法人ASTAの“出張授業”がおこなわれた。

※LGBT…L=レズビアン、G=ゲイ、B=バイセクシャル、T=トランスジェンダーなどの性的少数者の総称の一つ

NPO法人ASTAは、性的少数者への理解不足が原因で起こる差別、いじめ、LGBT当事者の自己否定などの問題を改善するために、2017年5月から活動を開始した団体だ。教育現場を中心に、さまざまな取り組みを展開。教職員・児童・生徒・保護者に向けて正しい知識を伝える出張授業や、講演会、LGBT成人式などを手がけている。

この日は、ASTA共同代表理事の久保勝さんによる基礎知識の解説に加えて、現在教員を務めている当事者のスピーチや、当事者の母親2名による対談、グループワークなどがおこなわれた。

 

【ASTA共同代表理事・久保勝さん講演】
「いない」のではなく「見えない」
LGBT当事者をとりまく現状

まずは久保勝さんの講演からスタート。13人に1人と言われているLGBTの割合は、6大苗字(佐藤・鈴木・高橋・田中・伊藤・渡辺)のそれより多く、総人口で見ると愛知県の人口より多い…など、わかりやすい数値を引き合いにその身近さを伝えていく。また、トランスジェンダーとシスジェンダーの違い、ヘテロセクシャルとホモセクシャルの違いなど、専門的な用語を詳しく解説。あまりにも長くなってしまうためここでの解説は避けるが、それぞれの意味を理解するのはかなり難しかった。ただ、久保さんは「セクシュアリティは分類できないほどあるので、”男か女か”の二元論では語れない。グラデーションのようなものと考えてほしい」と話す。

LGBTにまつわる世界の動向としては、最近、LGBTという言葉そのものが使われなくなってきているそうだ。その理由は「あえて分けて考えると壁ができてしまい、分断が生まれてしまうから」。日本ではまだまだLGBTの認識自体が広がっていないため、その呼称を使用せざるを得ない状況だが、ゆくゆくは使用しない世の中になるのが当たり前だろう。しかし「日本はG7の中で唯一、セクシュアリティに関する法律が整っていない」。また、同性カップルを結婚に相当する関係と認める制度「同性パートナーシップ」も、まだいくつかの都市でしか導入されていないそうだ。久保さんの語り口から、法整備への道のりは険しいことが伝わってきた。

また、教育現場における問題点にも触れた。多くの学校では、保健の授業やトイレ、更衣室、健康診断などの場面で配慮が足らず、まだまだ当事者をサポートできていない状況だ。久保さんは「”いない”のではなく”見えない”だけ。そのことを知り、寄り添える人たちが増えていけば現状は変わっていくと思います」と話す。さらに「カミングアウトされたときは、まず”ありがとう”と言ってほしい。自分に伝えてくれるのは信頼の証です。そのあとで何に困っているのか、今後どうしていきたいかを聞く。アウティング(本人の了解を得ずに性的指向や性同一性等の秘密を暴露すること)は原則絶対にダメです」と、アライの心構えを話して講演をしめくくった。

 

【当事者・幸奈さん講演】
「職員室にも、いるんだよ」
教員の当事者が語るライフストーリー

続いて、愛知県内の学校で働いているMTFのトランスジェンダー、幸奈さんが登壇。幸奈さんは男性として生まれたが、幼い頃から男子向けのアニメやマンガの多くに興味がなかったという。「私は“女性として女性が好き”です。小さいときは黒く塗ったタオルを被って長髪をマネしてみたり、スカートを履いてみたりして、女性らしくなろうとしていましたね」と話す。しかし、歳をとるごとに、声変わりなどを通して”自分は女性ではない”という事実が重くのしかかっていったそうだ。

カミングアウトについては「両親がケンカすることがわかっていたから話せませんでした」。それでも高校3年生のとき、好きになった同級生に思い切って告白。無事受け入れてもらえたが、依存状態に陥ってしまい関係は破局した。学校生活においては、保健体育や家庭科の授業など、男女の区別や性役割によってグループを分けられる場面が多くあり「男らしさとか、女らしさってなんだろう?」と強い違和感を感じた幸奈さん。そして大学1年生になったときには、そうした性の疑問を同級生にスピーチしてぶつけたそうだ。その後の大学生活では(いわゆる”ネタ”という存在としてではあるが)、なんとか周囲に受け入れられた。

大学卒業後、幸奈さんは教職員として働きはじめる。公務員になれば大丈夫だと思っていたが「異端扱いされると思って、結局10年以上言えませんでした」。しかし今年3月、ついに生徒へカミングアウトした。その理由は「このままだと自分と同じように、10〜20年後、苦しだり悩んだりする人がいるとわかった」からだ。「私自身、ずっと嘘をついて生きてきました。そんな人生ってどうなの?と思って」。生徒からの反応はとても良いものだった。「先生は先生だから気にしない」「そんな人を支えられる人になりたい」という声が返ってきたのだ。幸奈さんは「生徒は、はるな愛さんやマツコデラックスさんといったタレントを見ているから違和感を感じないと言っていた。メディアを通してLGBTの存在を身近に感じていたのだと思う」と話す。いま学校でセクシュアリティの悩みを抱えている生徒に対しては、「職員室にもそういう人がいるんだよって、伝えたいですね。私と同じような苦しみを感じている人に、ひとりじゃないんだと思ってもらいたいし、今後も自分の存在や活動を通して、頼れる友達や教員を増やしていきたい」と話した。

その後、職員旅行で同僚・先輩たちにもカミングアウト。職場からも受け入れてもらえた幸奈さん。ただし「強制的に言わせるのはダメですよ。”ウェルカミングアウト(ウェルカム+カミングアウト)”であることが大切です」と念を押す。今後は「できるだけ”しれっと”存在している先生でありたいですね。これからは、左利き用のグローブや車椅子用のスロープなどと同じように、当事者が直面するであろう壁に周りの人が気づいて、壁を取り払うよう声をあげられる世の中になってほしいです」と話してスピーチを終えた。

 

【当事者の母親・松岡さん&春美さん対談】
受け入れるまでに”数秒”と”数年”
ママ2人、それぞれの寄り添い方

「ずっと前から気づいていたから、早くカミングアウトしてほしかったです」と話すのは、当事者の母親であり、ASTA共同代表理事・松岡成子さん(子どもはLGBT支援の活動を行う松岡宗嗣さん。自身がゲイであることを公表している)。その言葉とは対照的に「私はカミングアウトされてから、10年近く受け入れることができませんでした」と話すのは、同じく当事者の子を持つASTAメンバー・春美さんだ(なお春美さんの子どももASTAに所属している。FTMのトランスジェンダーである貴毅さん)。

松岡さんがカミングアウトされたのは3年前。とある居酒屋にて二人で飲んでいたときだった。意を決して話した息子さんに対して、松岡さんは「ようやく言ってくれたんだ」と素直に受け入れられたという。「私は“息子に寄り添ってくれる人(パートナー)”であれば、どういう方でも気にしません。寝込んだときや潰れたときに、すぐに駆けつけて寄り添ってあげる人。そんな人と出会ってくれたらそれで良いんです」と話す。

一方、春美さんは10年ほど前にカミングアウトされてから、昨年までその事実を受け入れられなかった。「ずっと女の子として育ててきたから、どうしても理解できなくて」。松岡さんの「トランスジェンダーなのかゲイなのか調べなかったの?」という質問に対しては「拒絶して無視している状態だったから調べませんでした。“なかったことにしたい”“テレビの中だけの話でしょ”と思っていたし、なにがなんでも元に戻す!という気持ちが強かった」と話す。春美さんは友人たちから「自分の子どもであることには変わりないでしょ。認めてあげなよ」と諭されたそうだが、「自分の子どもじゃないからそんなこと言えるんだ」と拒否。まったく聞く耳を持たない状態だったという。

そんな春美さんが1年前、ようやく貴毅さんのカミングアウトを受け入れた。そのきっかけは「私が守らないと、この子はどうなってしまうのか」という気づきだった。その頃、貴毅さんは度重なる就活で疲弊していた。春美さんは「この子を支えたいのに、私がこれではダメだ。変わらなくちゃ」と決心。すると、あれほど頑なに拒否していたのが嘘のように自然と受け入れることができ、親子関係もみるみるうちに良くなった。それ以来春美さんは、昔の自分と同じような境遇にいる親たちをサポートするため、ASTAで活動を続けている。「松岡さんのような方もいれば、私のような人もいる。その違いがわかるからこそ、私は私にしかできないことをやっていきたい」。

松岡さんは「親がまず知っておくべきことなんです。子どもにとっていちばんの理解者である親にLGBTのことを伝えたい。そして、あらゆる人が可能性を感じる社会になってほしい。そんな気持ちで活動をしています」と話し、対談は終了した。

 

【グループワーク】
対話を通して見える
生きかた、多様性

最後に、ASTAが数ある事業の中で最も重視している「グループワーク」がおこなわれた。参加者5〜6名が座る各テーブルにASTAメンバーが加わり、彼・彼女らのライフストーリーを題材としてさまざまな会話が展開された。

ある席では笑い声が起こったり、あるいは全員が真剣な面持ちで話し合ったりと、テーブルによって話題はさまざま。当事者同士が語る日々の苦労や、学校でのエピソード、海外と比べた日本のLGBT理解度など、この日しか話せないトピックが至るところで飛び出した。特に印象的だった話は「学校のほうが職場よりもハードな状況かもしれない」というもの。最も気を配らなければならない教育現場で、対応が後手に回っている。この事実は多くの参加者が共有しているようで、ASTAの事業の重要性をひしひしと感じた。

グループワークの終盤には「ケースワーク」もおこなわれた。“自分=小学校の教論”と置き換えて、セクシュアリティに悩む子どもへの対応を考える、というものだ。それぞれのテーブルで出た結論は多種多様だったが、久保さんは「正解はありません。重要なのは“連携すること”、そして“絶対に決めつけないこと”です」と話し、受け入れ側の体制についても一言添えた。

全プログラムが終了した後、久保さんは締めのあいさつで「人はどこかで必ずマイノリティです。性別も性格も性的指向もそれぞれ違って当たり前ですよね。そのことを“自分ごととして”考えていけば、社会はもっと良くなっていくと思う」と話したが、まさしくその通りだと思った。どうしても“当事者とそれ以外”と分けて考えがちなLGBT問題だが、詰まるところ全ての人間が当事者なのだ。性は千差万別、それが当たり前である。そのことを理解する人が増え、“当たり前が当たり前になる”ことで、差別やいじめなどは無くなっていく。その当然の事実に、この日あらためて気づかされた。

 


 

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コメント

  1. 大内薫 より:

    バイトがしたい探しています。

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